黒い稲妻

第一部  壊れゆく世界

第六話

会議は終わった。
一同は部屋を出始めた。
これからが勝負だった。マリアにこの作戦を悟られてはならなかった。口は利けなかった。マリアは人間の声は全てモニターしてた。もちろん文字もかけなかった。研究所内の筆記用具はすべてデジタルボールペンだった。マリアがモニターしているのだった。何らかの筆記用具の代わりのようなものを使おうものなら、たちまちカメラに見つかってしまう・・・。
イチロウ達はマリアを欺く為、今の会議がまるでイワーク処罰会議であったかのように装った。
イチロウの任務は大きかった。βー区7階第2の電磁波発生装置を破壊しなければならなかった。第2電磁は発生装置はマリアAIが研究所を管理する為の装置だった。マリアは、ほとんどの管理を光ケーブルで行っていた。マリアは研究所を管理するのがメインの機能だったので電磁波よりも有線のほうが確実だったのだ。だが極一部だけは電磁波を使用していた。
それは、携帯であったり、”街”の管理だったりした。そして、L型ロボットも電磁波によって管理されていた。A〜K型ロボットを使ってマリア有線をカットしていくのをL型が阻止してくるのは間違いなかった。研究所内では電磁波に敏感な装置が数多くあった為、強力な電磁波は使えなかったのだった。L型は実験的に導入されていた。
イチロウ達6人は7階へ向かった。彼らはマリア電磁波発生装置がを破壊する為、同じβー区のアバトラボへ向かった。アバトラボでは分子間結合力を破壊する装置が開発されていた。それは、直径5メートル長さ20メートルと巨大なものだったが、あらゆる物質の分子間結合力を緩めることができた。そうすると物質はもろくなったり、液状化したりした。

イチロウ達はエレベーターの前まできた。
イチロウはエレベーターにのろうかどうか迷った。エレベーターを止められたら厄介だった。かといって階段を使うのは不自然だった。イチロウは迷いながら、しかし一方ではマリアが故障して人類を半減させようとしているなどといった戯言が本当に現実なものだという実感は到底なかった。
「イチロウ君・・・・」
アバトが言った。
「チョット考え事をしているんだ・・・階段を使ってくれないかね?」
事実、アバトには歩きながら考え事をする癖が合った。空は考え事をするためにしばしば遠回りをした。
「あ・・はい。」
イチロウは階段を上り始めた。7階まで3階あった。イチロウはちらりとロボットに目をやった。火災時用の遮断ドアを主導で開けるにはロボットが必要だった。ロボットの手はコンクリートの壁に穴を開けることができた。ロボットはある程度の設備改造程度ならラボ内でこなせるように様々な機能を持っていた。又、イチロウは”ディスク”を持っていた。このディスクには際ほどの会議に参加していた研究所のおもだった科学者達の”サイン”が書き込まれていた。このディスクをロボットの額に差し込めば、ロボットは、その人間の命令をマリアの命令よりも優先する・・・。
7階に着いた。δ区だった。一本の幅5メートルほどの廊下がまっすぐに伸びていた。人やロボットがちらほらと移動していた。
10メートルほど向こうのラボのドアが不意に開き、L型ロボットが出てきた。イチロウは、何食わぬ顔で歩き続けた。
(このロボットが襲ってくるなんてことが・・?・・まさか・・・)
だが、そうなった時の対応をイチロウは考えめぐらせた。
(ここからアバトラボまで500メートルくらい・・・もし、こいつが襲ってきたら・・俺だけダッシュだ!・・・アバトや知花などはほうっておいて自分だけアバトラボに行きそばにいるロボットにディスクを挿入する。それでよい。ロボットが走るところなど見たことはない。オレは100メートル10秒チョットだ。・・・アバトがいたほうが、ラボ内での状況認知がスムースに行くことは確かだが、ディスクさえあれば何とかなる。)
ロボットはまっすぐ廊下をやってきた。
(どうくる?・・・アバトに襲い掛かるか?)
イチロウは緊張した。彼は、自分だけ走る前に、ロボットを投げ飛ばすのはどうかと閃いた。
(ロボットが何キロ有るか知らないが、アバト博士を捕まえようと手を伸ばし片足が浮いたところを支え釣り込み足で・・・)
自信があった。
(だが、まさかな・・・)
L型ロボットとイチロウ達はすれ違った。何事もなかった。イチロウは思わずため息をつき、後ろを振り返った。L型ロボットが立ち止まった。イチロウはそれを見ながら歩き続けた。L型ロボットが向きを変えた。イチロウは努めて落ち着いて歩き続けた。もう一度振り返ってみた。
L型ロボットが10メートルほど離れてついてきていた。
(今、出てきたラボに帰るんだろう・・何か、呼び止められてんだきっと。)
先ほど、出て来たドアの前を通り過ぎた。ロボットはラボには入らず、イチロウ達についてきた。
20メートルほど先のラボのドアが開いた。中からL型ロボットが出てきた。イチロウは振り返った。ついてくるL型が2体になっていた。
「イチロウさん!!」
知花が震えるこれで半ば叫んだ。イチロウは走らなかった。ラグビー部のキャプテンでもあった彼には前のL型ロボットをかわす自信はあった。だが、相手が予想外に素早かったら?
(このまままっすぐ歩いて行き、あいつが誰かを捕まえようそしたら・・・その瞬間にダッシュする・・・)
イチロウは静かに歩き続けた。
(落ち着け・・)
スポーツで鍛えたメンタルコントロールがこのとき生きた。イチロウの鋭い視力は300メートル先の廊下の折れ曲がり部分にあるエレベーターを捕らえた。エレベーターが下から上に上がってくるところだった。
「ヤバイッ!!」
叫んだとき、イチロウの体は自然に反応していた。彼の右足のシューズは床を確実に捉え上体は45度に傾斜した。脚の筋肉はバネとなり彼の体をはじいた。両腕は大きく早く下半身を牽引するがの如く振り動かされ、彼を加速させた。
L型の1メートル手前で彼は体を右にふってフェイントをかけた。L型は予想より動きが遅かった。イチロウはL型の腕をとり体を回転させてロボットの体を浮かせた。L型の重量も予想ほど重くはなかった・・・70キロ程度だった。彼ははロボットの体を1回点以上空中に振り回すと頭部を壁と廊下の角に叩きつけた。ロボットのメインコンピューターは頭部にあったからだった。ロボットは痙攣して立てなくなった。イチロウはすぐさまエレべーターに向かってダッシュした。エレベーターが到着する前にその前をクリアしなければ・・・L型が何対出てくるか分からなかった。
イチロウがエレベーター前に差し掛かるよりも少し早く、エレベーターは止まった。ドアがゆっくり開き始めた。中にL型が5体いるのが見えた。ロボットはエレベーターのドアが完全に開くまでは出てこないはずだった。
(間に合う!)
が、ロボットは動き出した。イチロウはとっさに携帯を投げつけた。それはロボットの”目”電磁波センサーに当たり砕け散った。イチロウはあっという間にロボットの前を通過した。
角を曲がると前方50メートルのところにアバトラボが見えた。ドアの前にロボットが立っていた。
「開けろ!!」
イチロウは叫んだ。
「オーソリティーを証明してください。」
「バカッ!!」
イチロウはもう少しで、ロボットを殴りそうだった。声も上ずった。すぐ思い出してディスクをロボットの額に挿入した。ドアが開いた。
広いラボだった。ざっと見て4,5十人がたち働いていた。イチロウが飛び込んできたので近くにいた研究者達は振り向いた。イチロウはドアのところのロボットに叫んだ。
「非常事態だと言え!!L型を中に入れるな!!」
すると、ラボの中にいた数体のロボットがサイレンを鳴らし、非常事態宣言をした。
研究者達は自体が飲み込めずポカンとしていた。
「その大砲で隣の壁をぶちぬけっ!!」
イチロウはそれらしきものを指差して叫んだ。それは、直径30センチ長さ10メートル程の銀色をしたミサイルのような形をしていて無数のアンテナのようなものに囲まれていた。
ロボット達はサイレンを鳴らしがら
「非常事態です。オーソリティーの指令に従ってください。」
とうたっていた。研究者たちはあっけにとられて動けないでいたがロボットたちはすぐに、MDF・・・分子間結合力破壊装置・・・を壁のほうに45度回転させようとしていた。幸いこのラボにL型はいなかった。
「な・なんだ?どうしたんだ?!」
研究者の一人が悲鳴を上げた。
ドアの向こうからセラミックが激しくぶつかりある音が聞こえてきた。部屋のライトが黄緑色から橙色に変わった。それはメイン発電所からの送電が途絶えたことを意味していた。同時にMDFの安全装置が作動した。
「マリアが故障した!!コントロールを切断する。」
ドアの向こうではがしくセラミックが砕かれる音がした。研究者たちは事態を理解し始めた。
だが、誰一人動けずにいた。金縛りにあっているようだった。
「MDFの安全装置を主導で解除してください。」
ロボットがうたった。
ドアが不意に開いた。3対のL型ロボットが現れた。その後ろから別なロボットが現れ、L型と戦い始めた。イチロウは近くにいる研究者に言った。
「何か武器になるものはないかッ?!」
その時だった。マイクからマリアの声がうたった。
「降伏しなさい。抵抗するものは優先的に処理します。」