弓の鉄人

 

魔島

 

城跡。廃墟。

カメレオンが、いっぱいいる。カメレオンたちは、ゆらゆら飛んでくる気体のような物を食べている。

カメレオンの近くで大きな赤い岩が、かすかに揺れている。

 

ムハン城

城が何者かに攻め立てられていて、合戦のさなかである。敵は手ごわく、正体不明である。・・モノノケのようだ。

 

チチク姫の間。

ムハン王と、チチク姫、その他、護衛の者。敵は、姫を狙っているらしい。壁をよじ登ってくる。

ムハン王「(怯えまくっている)・・ユリワカは、まだかーっ!」

クリス「・・・はぁ・・・まだ寝てらっしゃいます。」

よじ登ってくるモノノケは、なかなか死なない。矢が何十発も当たって、やっと落ちる。

取り乱しているムハン王をチチク姫が落ち着かせる。

チチク姫「ムハン王様・・・ユリワカ様は一番鳥が鳴くまではお目覚めになりません・・・決して・・・クリス!」

 

ユリワカの間。(五階)

右大臣が、部下達に命じてユリワカの鉄弓を持ち出そうとしている。ユリワカの部下が、それを阻止しようと争っている。

城の外では、兵達がモノノケ達にバタバタと殺られている。

右大臣「左大臣(ユリワカ)が、眠っている今、命令権は私にある。サッさと弓をよこせ!」

左大臣の部下達はこれは、ユリワカ殿の私物であるし、どうせ、ユリワカ以外に引けるものはいないと拒む。しかし、右大臣は、強引に奪い取ってしまう。

この大騒ぎの中にあってもユリワカは眠っている。

 

・・・・この鉄弓は、ユリワカにしか引けない不思議な弓である。ユリワカは、元は、この島に流れ着いた、みなしご、であるにもかかわらず、鉄弓の威力と腕前によって、左大臣にまで上り詰めたのだ。右大臣は、ユリワカを失墜させる為に、鉄弓を奪い取ってしまうか、でなければ、海にでも沈めてしまおうと狙っている。

 

右大臣「」よし、引き絞れ!(いっくらなんでも、これだけの人数で引けば・・・)」

屈強な男達が数人がかりでが、鉄弓を引こうとする。・・が、ビクともしない。モノノケたちが、チチク姫の間への塀を登っている。

歯軋りする右大臣。

 

城の中を、カメレオンが一匹歩いている。巧みに擬態して、身を隠している。

 

ユリワカの間に鶏を抱えたクリスが、駆け込んでくる。鶏を鳴かせようとして、くすぐったりしている。チチク姫が護衛達に引き止められながらやってくる。なかなか鳴かない鶏。

チチク姫「・・どうしたら・・・」

 

クリス(間抜けな男)「口付けとか・・」

一同「・・・は?・・・」

兵士A「それだ!姫、ユリワカ様と口付けなさったことは?」

チチク姫「・・なにを、こんなときに・・?」

兵士A 「いにしえより、こんな場合、口付けにより目を覚ますと物語などにあります!」

真っ赤になるチチク姫(16歳)

兵士A「躊躇している場合ではありませんぞ!!」

皆にあおられ、チチク姫はユリワカの枕元にひざまづく。

祈るように口づけする。

「(ユリワカ様・・どうか・・お目覚め下さい・・・)」

ゆっくり、唇を離す。

ユリワカ、起きない。

泣きそうになるチチク姫。

そのとき、城内に一匹のモノノケが、侵入する。続いて、ぞろぞろ何匹も入ってくる。

護衛たちをなぎ倒して、姫を捕まえる。連れ去られる姫。

そのとき、騒ぎで興奮した鶏が、大きな声で鳴く。

突然、バチッと目覚めるユリワカ(20歳。男)。兵士Aを始め、多くの兵が血まみれで死んでいる。瞬時に事態を把握するユリワカ。弓がなくなっているのに気づく。数本の矢と剣を取る。

ユリワカ「クリス!姫は?」

クリス、のそっと廊下の端を指差す。

チチク姫「ユリワカ様ーッ!」

猛スピードで追いかけるユリワカ。・・・前方にモノノケが見える。

ユリワカ「なんだ?!あれは?!!」

剣で斬る。もののけ、倒れない。モノノケを無視して、下の階の屋根に飛び降りるユリワカ。先回りして姫を救おうとする。

 

城内

右大臣の部下ボルチが鉄弓を隠そうとしている。ユリワカの部下が、それを見つけて争いになる。下の階の屋根の上でユリワカが苦戦しているのが見える。「ユリワカ殿ーッ!」右大臣が表れて、ユリワカの部下を後ろから斬る。鉄弓、落ちる。

右大臣「くそっ!」

 

鉄弓を受け損なうユリワカ。慌てて拾いなおすと、「すまん、すまん。」と、弓に謝って、弓をこする。

チチク姫「ユリワカ様ーッ!」

ユリワカ「うおおお・・・・」

あれだけ強い弓が、ユリワカの手にかかるとめいっぱい引き絞られる。

鉄弓を引き絞ると、モノノケを射るユリワカ。モノノケ、一発で倒れる。二の矢、三の矢と射る。矢は、一ッ直線に飛んでいき百発百中で命中する。次々に倒れるモノノケ。しかし、矢が尽きる。

ユリワカ「クリス!」

上に向かって叫ぶ。

クリス、上からユギ(矢を入れて背中に負う武具)を落とす。ユリワカ、屋根から屋根へと飛び移って魔神のごとく活躍するが、結局、チチク姫は連れ去られてしまう。

 

魔島

モノノケ王が、チチク姫を見て、怒っている。

モノノケ王「俺は、人間の女に興味ないと何べん言ったらわかるんだ!?

モノノケ王は、ランプや指輪などに宿った、「宿り姫」フェチなのだ。宿り者から姫を引っ張り出して虐めるのが大好きなのである。モノノケ達は、その辺のこだわりが理解できない。

チチク姫「あなたの望みは、ただ、それだけなのですか?」

モノノケ王「あん?・・・そうよ!」

チチク姫「では、ムハン国の人たちは助けて頂けるのですね・・・良かった・・・」

モノノケ王「馬鹿か!戦争にきまってるだろ?宿り姫は多ければ多いほどワシは嬉しいのだーッ!宿り姫を生み出す物・・・それは戦争だーッ!恨み、妬み、嫉み、辛み・・・戦争バンザーイッ!!ガハハハ・・・」

チチク姫の脳裏にムハン国とモーゼ国の悲惨な戦争の光景が浮かぶ。・・・

モノノケ王「ガハハハ・・・そんなもんじゃない!」

モノノケ王は、チチク姫のイメージをもっと悲惨な物にして、水晶玉で見せる。チチク姫、気を失う。

モノノケ王「くっ・・気を失ってしまったか・・・つまらん・・」

モノノケ王は、そばを歩いていたカメレオンを見つけると、捕まえる。マウストゥーマウスで生気を吸い取る。うまそうに「ふう・・」と、息を漏らす。

 

モノノケ王は、宿り者探知機で、北の国に、いい宿りものがあるのを知っている。もちろん自分で行って、今すぐ奪ってきたい。しかし、往々にして、宿り者には、恐ろしい力があり、モノノケ王は恐れている。

まず、弱点を調べておかないと・・・。

 

ムハン城 朝

ユリワカと右大臣が激論を交わしている。

右大臣は軍事を担当している。彼は、軍隊を発動させたくてたまらない。更に、勢いに乗じて、軍隊をおさえ権力を握り、一挙に、国を我が物にしようと企んでいる。

ユリワカは、少人数で、まず、偵察に行くべきだと主張している。

・・・カメレオンが、一匹、やってきている。何かを伝えようとしているのだが、二人とも、議論に夢中で気づかない。

右大臣「お前なんか、捨て子で成り上がりもんじゃないか!!」

拳を振り回していて、大変危険なので、カメレオンは、石に擬態する。

クリス「・・・はぁ・・確かに・・・しかし・・・」

マネケなクリスは、後の言葉が続かない。

 

ユリワカは、モーゼ国との、長年にわたる戦争を講和にこぎつけた英雄である。

しかし、どうもうまく語れない・・・最近、ムハン国の人々は、昔のことが、うまく思い出せなくなりかけてきている。

 

ムハン王「と、とにかく、早く姫を取り戻さないと、モーゼ国と再び戦争になってしまう。」

チチク姫は、ムハン国の姫ではなく、モーゼ国の姫なのだ。

講和のために交換されている人質なのである。

もっとも、今はユリワカと、いい仲となり、いいなずけとなっている。ムハン王には、子供がないので、将来ユリワカはムハンとモーゼと両国を治める大王となる可能性が高い。

 

右大臣「何処の馬の骨の子かわからんやつに国を盗られてたまるかっ!」

言い捨てると去っていく。勝手に軍隊に指示を与えている。止めに走るムハン王とユリワカ。しかし、軍人達の目に戸惑いがある。

 

ユリワカは、鉄弓とともに、ムハン国に流れ着いた異国の捨て子である。ムハン王の養子となって活躍したとはいえ、チチク姫が、誘拐されてしまった今、ユリワカの権力と信頼のバックボーンは、もろくも崩れ去ってしまったのである。

ユリワカ「クソッ!」

近くにあった石を、おもっきり殴る。

石が、潰れて、体液をかぶるユリワカ。唖然として、自分が潰した物を見つめる。それは、カメレオンの姿になる。死にゆくカメレオンが恨めしそうにユリワカを睨んでいる。

ユリワカ「な、なんだ?これは?」

驚異の目をみはるユリワカ・・・カメレオンの姿が、なんとなく鉄弓に刻まれている紋章に似ていると思う。

 

海 船上  昼

30人を乗せた船で、魔島を目指しているユリワカ。左大臣は直属の兵30人しか動かせないのだ。その中に、カメレオンを知っている物がいて、魔島の位置のめぼしがついたのだ。

 

30人の中に、右大臣の部下のボルチが、変装して紛れ込んでいた。

ボルチは、魔島の位置を聞き出して、伝書鳩で、右大臣に知らせる。

 

ユリワカの顔には、醜いアザができている。カメレオンの体液を浴びたせいだ。

日が暮れて、寝る仕度を始めるユリワカ。

ボルチ「左大臣は、どうして、あんなに早く寝てしまうんだろう?」

と尋ねる。ユリワカには、何か秘密があるらしい・・と、右大臣やボルチは考えている。ユリワカの部下は、ユリワカを”左大臣”とは、呼ばないのだが、マネケなクリスは気づかない。

「・・はぁ・・・何か・・その・・弓の力と・・・」

関係が有るらしい。詳しいことはユリワカ本人にもわからない。日が暮れて、静かになってくるとユリワカは睡魔に耐えられず眠ってしまう。

 

眠る寸前のユリワカ。苦しそうにうめいている。顔のアザが少しずつ広がっていく。ユリワカの意識に夢が忍び込んでくる・・・ムハン国とモーゼ国が戦争をしている・・・村が焼かれ、人が殺され・・・恨みが増幅して、人々が醜くゆがんでいく・・・

 

ボルチが忍び込んでくる。鉄弓を盗もうとして、そのあまりの重さに、うっかり手を滑らせる。

ユリワカ「誰だっ!!」

眠くて苦しそうに起き上がる。

ユリワカ「ボルチ・・・何故、貴様がこの船に乗っている?」

ボルチ、見つかって万事休す・・・苦し紛れに適当なことを言う。

ボルチ「右大臣様からのご命令でしてナ・・・ユリワカ様の器を確認してこいとのことなんですよ。」

ユリワカ「器?・・どういうことだ?」

ボルチ「つまり、王たるものとしての器を、ユリワカ様がお持ちかどうかと言うことですな。」

ユリワカ「なんだと?」

ボルチ「つまり、もし、モノノケどもが、チチク姫の命と引き換えに和平の交渉を持ちかけてきたら、どうなさいますか?」

ユリワカ「なに!?・・・(一瞬真剣に悩む)・・そんなことあるわけないだろうが!」

ボルチ「相手はモノノケですぞ・・・もしあったら?」

ユリワカ「(顔をゆがめて苦しむ)・・・姫を救出したあと、交渉をする。」

ボルチ「その間に大勢の兵士が死にますぞ!」

ユリワカ、ボルチを燃えるような眼で睨む。

不適に微笑うボルチ。

ユリワカ、眼を閉じ、悩む。頭を抱え、こぶしを握り締めて悩み苦しむ。

・・・眠気が襲ってくる。

ボルチ、チャンスと見て鉄弓を持って逃げる。弦が、ドアにひっかかってビンと鳴る。ハッと、気がつくユリワカ。追う・・・眠くて死にそうだ。ボルチはクリスにぶつかって、鉄弓を海に落とす。ボルチは、他の部下達にたちまち抑えられる。

海に飛び込むユリワカ。

 

海の中

・・・眠い・・・鉄弓は、なかなか見つからない。

・・・「・・・たすけて・・・」

と、若い女の声がする。

・・・鉄弓の精が表れる。

精の案内で鉄弓を見つける。鉄弓は、寒さと塩に弱い・・・しかし、今、どうしても話さなくてはならないことが・・・

鉄弓の精によりユリワカは自分がモノノケ王に滅ぼされた南の島の王子だと知る。

モノノケ王は、人の記憶をボケさせるのと、欲望を増大させるのが得意で、自分の居場所を隠している。カメレオンをまだ覚えている人がいて、運が良かったと話す。しかし、居場所がバレた今、何か、手を打ってくる筈だと懸念する。

・・・精は更に、カメレオンの事も話そうとするが、ユリワカは、眠気の限界に達して水中で眠ってしまう。寒さと塩のつらさをこらえユリワカを助けて浮上する精。・・・船上の声が聞こえてくると同時にスウーッと消えてしまう。

 

助け出されるユリワカ。眠っても尚その手は鉄弓を放さない。

行く手に魔島が見えてくる。

 

海上  朝

騒がしい物音に目を覚ますユリワカ。

甲板に出ると、遠方に黄金の島が浮かんでいる。黄金の建物とかがいっぱい見える。

 

近づくと、黄金島(魔島)の港にモーゼ国の戦艦が4隻も停泊しているのが見える。

大砲が、いっせいに、こっちに向かって回転している。

 

黄金島に向かってぐんぐん進むユリワカの船。

ユリワカ「とめろーっ!」

叫んだ直後、自分の影に気づいて、ぎょっとする。

それは、人間の影ではない。

「化け物だーッ!」

と、誰かが叫ぶ。

モーゼ艦隊が、発砲してくる。打ち返すユリワカ艦。

人々は皆、モノノケ王の術中に嵌っていて、欲に目がくらんでしまっている。

ユリワカ「打つなーッ!白旗を揚げろ!」

後方から、ほら貝を吹くでっかい音が聞こえる。

 

右大臣率いる艦隊が直ぐそばまで来ている。

右大臣「全艦、全砲を敵指令艦に向けよ!」

 

ムハン艦隊とモーゼ艦隊壮絶な打ち合いを始める。

必死で止めようとするユリワカ。逆に部下達に殺されそうになる。

やむなく海に飛び込むユリワカ。矢を放たれ、必死で逃げる。

 

モーゼ艦隊は入り江に留まるのは不利と見て突進してくる。

モーゼ王「こうなったらもう、お終いだ!・・・チチク姫を返してもらおう!」

右大臣、あんな馬鹿娘はモノノケにくれてやったと叫ぶ。

激怒するモーゼ王。

明後日の未明、この場所で総決戦だと話をつける。

 

右大臣の脳裏には早くも両国を征服して国民を奴隷化する夢が描かれている。

 

両艦隊、本格的な戦争をする為に引き返していく。

去り際に発砲しあい、2、3隻沈む。

 

 

魔島 魔城内

その様子を水晶玉でチチク姫に見せて大笑いしているモノノケ王。

若い女は、虐め殺すと宿り物になることがあるので、お前も虐め殺してやると言っている。戦争は、宿り物がたくさん出来るので楽しみだと言っている。

”宿りしろ”になりそうな物はないかと、チチク姫の体を弄くりまわす。

ペンダントを発見する。

モノノケ王、嬉しそうに笑う。

 

海岸>

一人上陸するユリワカ。カメレオン人間になってしまっている。

「カメレオンの祟りか・・・?」

うろたえている隙に、モノノケが、鉄弓を盗っていく。

気づかないふりをするユリワカ。・・・暫くして、そっと後をつける。ボロボロになって邪魔な服を脱ぎ捨てる。

今は、わが身の不幸を嘆いている場合ではない。モノノケのボスを倒さなければ戦争になってしまう。

 

尾行するユリワカのカメレオンの体は自動的に擬態し、モノノケや水晶玉の目を欺いてくれているのをユリワカはまだ、気づいてない。

 

モノノケ王の間  宵

まんまと忍び込んだユリワカ。

鉄弓を弄っているモノノケ王。鉄弓が、寒さと塩水に弱いと既に知っている。

チチク姫の前で、今から宿り姫をいびり出してやるから見ていろと、喜んでいる。

 

そこへ、モノノケが、縛り上げた右大臣をつれて現れる。

モノノケ王は右大臣が、自分と裏取引をする為にワザと捕まってきたのだと察知する。

モノノケ王「戦争を長引かせたらその分の報酬をやる・・」

というオファーを出す。

話に乗る右大臣。

右大臣、自分をののしるチチク姫をあざ笑う。

 

隙をうかがっていたユリワカ。今がチャンスだと飛び出すが、あえなく捕まる。眠くなってきていたのだ。

モノノケ王ユリワカをじっと見つめる。

モノノケ王「・・・でかいカメレオンだなぁ・・・?」

岩牢に入れておけと命令する。右大臣も、これがユリワカだとは気づいてない。

 

右大臣「ところでユリワカは・・・?」

モノノケ王は早く捕まえなければ困ることがあると言っている。しかし、水晶玉に映らない。

 

ふと、でかいカメレオンをの精気を吸ってみたくなるモノノケ王。牢に出かけると、いきなりマウストゥーマウスで、ユリワカから精気を吸い取ろうとする。・・・吸えない。

モノノケ王「・・・でかいから、何かコツがあるかもしれない・・・」

ユリワカ、眠そうな目で、モノノケ王を睨む。

モノノケ王「・・なんか、気に入らない目つきをしている・・・当分、眠らしとこう。」

術をかけようとするモノノケ王。その瞬間に眠ってしまうユリワカ。

モノノケ王、やけに早く効いたなぁ・・・と思う。

 

魔島  スタジアム型の広場  朝

ユリワカ、剣を抜いている。。チチク姫が縛られている。モノノケ王の術が掛けられているペンダントが、チチク姫の精気を吸い取り始めている。

ムハン国とモーゼ国の兵士達が何万人も上陸して、合戦の火蓋が切って落とされようとしている。もちろん会場では何十という艦隊が睨みあっている。

ユリワカ「モーゼ国よ滅びよ!この島は俺達のものだーッ!!」

剣を振り下ろす。

その時、鶏が鳴く。

 

岩牢  朝

ハッと目を覚ますユリワカ。鶏が鳴いている。

胸騒ぎがするユリワカ。

上のほうに、小さい窓がある。

よじ登るユリワカ。

外を見て、「あっ」と叫ぶ。

夢と同じシチュエーションが出来ていて、偽のユリワカが、縛られたチチク姫の前に立っている。

狭い窓から必死で出ようとするユリワカ。もがく。ユリワカの体が、少しずつ変形して出れるはずのない狭い小窓から出れてしまう。

 

広場

に向かって走るユリワカ。

「みんな、騙されるなーッ!そいつは偽者だ!」

でかいカメレオンが叫びながら飛び出てきたので、騒然となる群集。

ユリワカ、必死で叫ぶ。

「そいつは、偽者だ!本物のユリワカなら、なぜ自慢の鉄弓を使わない?」

事態に戸惑いながらも、ポイントを付かれて、ざわつく群集

ムハン王「む・・・確かにそうだ・・・」

ユリワカ「みんな、目を覚ませ、本物のユリワカは私だ!あっ!クリス!分かるか?私だ!ユリワカだ!・・・こんな姿に、なってしまったが、私がユリワカだ!私に鉄弓を引かせてくれ!」

必死で訴えるが、群集は、あまりの奇妙な出来事にポケッとしている。

 

ユリワカ「鉄弓を引かしてくれ!あれは、私でなければ引けない!私がユリワカだと証明してみせる!!」

クリス「・・・あぁ・・そういえば、さっき、一番鳥が・・・」

ムハン王「・・・一番鳥・・・待てよ・・そういえば、さっき鳴いたなぁ・・・」

その時、二番鳥が鳴く。群集がざわつく。

 

モノノケ王、人間に化けたモノノケ達に、カメレオンユリワカを捕まえるように指示する。

モノノケ王の部下達と戦うユリワカ。

ユリワカ「みんな!正気になるんだ!黄金に目がくらんではダメだーッ!!」

ユリワカ、取り押さえられて連れて行かれる。

 

しかし、ユリワカの登場で、術が少し緩んだと見たモノノケ王は鉄弓を使わないと、まずいと感じる。

ユリワカ姿のモノノケ王「邪魔が入った・・・フン!鉄弓か!こっち(剣)の方が雰囲気が出ると思ったんだがな・・・いいだろう!・・チチク姫処刑セレモニーは一時間後やり直す!・・・鉄弓を用意せい!!」

 

モノノケ王の間

鉄弓を引いてみるモノノケ王。

右大臣「その弓には不思議な力がかかっていて・・・」

モノノケ「知っているわい。」

鉄弓はビクともしない。

ユリワカが連れてこられる。

モノノケ王「この、でかいカメレオンが実はユリワカだった・・か・・オイ!弓の精!俺に引かせないとユリワカを殺してしまうぞ!」

とか脅かしてみるが、やはり鉄弓はビクともしない。モノノケはユリワカをムチでひっぱたく。眠くて抵抗できないユリワカ。

モノノケ王「くそう・・・頑固な精だ・・・どうしても出てこないなら斧でユリワカの首をちょん切ってしまうぞ。」と言ってかんしゃくを起こし本当に斧を振り上げる。すると弓から精が現れる。よろこぶモノノケ。精に抱きついてよだれを垂らす。右大臣が

「弓はなぜユリワカにしか引けないのだ?」

と問いただそうとする。余計なことは言うなとモノノケが怒り、言い争いになる。右大臣は自分が王となり国を支配しつつモノノケとも上手く付き合うと言う。ユリワカは二人の言い争いをの隙に弓を取ろうとするがモノノケに軽く引っ叩かれてダウンする。
モノノケは「お前では駄目だ。俺が偽ユリワカになるのだ。お前はパシリに使ってやる。」と言う。右大臣が何か言い返す。

その間に弓の精はユリワカに薬のようなものを渡す。それを飲むとユリワカは眠ってしまう。

モノノケ「精が弓に戻ってしまったではないか!今日は気分が壊れた。クソ。」

と言って右大臣とまだ、言い争いながら弓を持って部屋を出て行く。右大臣は去り際に眠っているユリワカのわき腹を思い切り蹴飛ばす。

 

 

 

岩牢

眠っているユリワカカメレオン。

小窓がふさがれて真っ暗になっている。物音ひとつ聞こえない。

 

夢の中に、弓の精が表れる。

ユリワカの変体について語り始めようとする精。ユリワカ、自分のからだのことなんか、今はどうでもいいと言う。

精は、ユリワカをなだめる。

ユリワカの変体は祟りではなく、ユリワカを守っているのだと言う。

カメレオンは、元々、この島の守り神だった。

小さい島国は外交上、時に応じて立場をコロコロ変えねばならず、カメレオンはそのシンボルとして崇められていたのだ。

いつしか、カメレオンは不思議な力を持つようになり島を守ってくれたが、あの、モノノケ王が現れて、とうとう滅ぼされてしまった。

自分は、その時の皇女で、ユリワカはモノノケ王を再び封印した英雄の子だと言う。

モノノケ王は、封印された後も少しづつ人の悪い心を吸い取って復活してしまったのだ。

ところで、ユリワカは、カメレオンの能力を全く生かしてない。

 

カメレオンの変体の真の能力は・・・○×○×・・・

 

ユリワカ「そうか!・・・そうだったのか!・・ようし!それなら手がある!」

 

モノノケ王の間

偽鉄弓を作り上げた偽ユリワカのモノノケ王。

 

魔島  広場 昼

チチク姫処刑セレモニーが再開される。

 

自慢げに、偽鉄弓を見せるユリワカ。

遠くに、チチク姫が縛られている。その脇に右大臣が腹黒そうに笑いながら立っている。

偽ユリワカ「いいかー!よく見ろ!!」

と言って鉄弓を引く。

と、ムハン王の隣にいるクリスがボソッと言う

クリス「・・あのぉ・・・これだったら、普通の弓でもとどきまするぅ・・・」

ピクッと顔の筋肉が痙攣する偽ユリワカ。

 

岩牢

が、開いている。

モノノケA「何で、あいてるんだ?」

モノノケB「それがな・・・中から、モノノケ王の声がするもんで、開けてみたら、モノノケ王が出てきたんだ。」

 

魔島  広場

縛られているチチク姫から、物凄く離れたところで鉄弓を引き絞っている偽ユリワカ。

矢を45度くらい上に向ける。

クリス「・・はれぇ・・・?・・ユリワカ殿の矢は常に一ッ直線に飛びまするぅ・・・」

ピクピクッと顔の筋肉を痙攣させる偽ユリワカ。矢を放つ。

とどかない。

どよめく群集。

偽ユリワカは威厳が保てなくなってきて苦々しい顔をする。

と、群集が、急にざわつく。

本物の鉄弓を持ったモノノケが、ヒョコヒョコやって来る。偽ユリワカ、ギョッとするも

「ははは・・・よく似た弓と間違えたようだわい・・ははは!」

と、豪快に笑ってごまかす。

偽ユリワカ「(小声で)誰が、もってこいと言った?」

モノノケ「モノノケ王様が。」

偽ユリワカ「?」

と思いつつも本物の鉄弓を引こうとする。・・・ビクともしない。真っ赤になって力を入れる

「貴様・・・ユリワカを八つ裂きにしてやるぞ・・・!」

それでもビクともしない。

群集が、偽者だ、偽者だと騒ぎ出す。

満身の力を込める偽ユリワカ。偽の姿を保っていられなくなり、だんだんモノノケ王になってくる。

群集が、ワーッ!!と叫ぶ。

モノノケ王、すっかり正体をさらしてしまう。

モノノケ王「もう、こうなったら、俺様が自分でメチャメチャにしてやる!・・・ものども、やれー!」

モノノケ王の部下達いっせいにモノノケになって群集に襲い掛かる。

鉄弓をほおリ投げるモノノケ王。鉄弓は、遠くまで飛んでいく。

クリス、弓に向かってダッシュする。

クリス「弓をくれ!」

鉄弓の回りの兵達「?」

クリス、普段からは考えられない物凄いダッシュ力で突っ込んでくる。>

モノノケ王、ハッと気づく。鉄弓を奪いに走る。

突然、もう一人クリスが現れる。

クリス「ユギで、ございまするぅー」

誰もが二人目のクリスの登場に

「あっ!!!!」

と叫び声を上げる。

クリス、もう一人の自分が物凄い勢いで走っているのを見て腰を抜かす。

群集が、パッと二つに割れて道を空ける。

走ってくるクリスの体が激しく輝いてカメレオンに変身する。

サッと鉄弓を受け取ると空けられた道を突っ走る。追うモノノケ王。道が閉じて、モノノケ王を妨害する。

モノノケと戦う兵たち、苦戦する。

モノノケ王は邪魔する兵達をものともせず突進するが、それでも、ユリワカのほうが早かった。

弓を左手に矢を左手に持ちつつユギを背負うユリワカ。

・・・・構える。

ユリワカ「うおおおおーっ!!」

鉄弓を引き絞る。

カメレオンの鱗が、バキバキ剥がれ落ちて、中からユリワカが現れる。

ムハン王も兵達も喜びの叫び声を上げる。

ユリワカ、矢をモノノケ王に向ける。モノノケ王、驚き、とっさのことで慌てて身を守ろうとして自らを岩にしてしまう。その岩に矢が突き刺さる。

「ギャァァーッ!!」

と、叫び声が上がる。

二の矢、三の矢と放たれる。岩の表面がどんどんリアルな岩になる。4本目の矢で岩が、二つに割れる。魔島の黄金が消え去る。

ユリワカ即座に目標を転じ、モノノケどもを射まくる。どのモノノケも一発で倒れていく。

ユリワカ、射って射って射ちまくる。

数百匹はいようかというモノノケをアッという間に全部射殺してしまう。

 

最後に右大臣に狙いをつける。

ギョッとして立ちすくむ右大臣。

矢は、一直線に飛んで右大臣の襟首を大木に打ち付ける。

ホッとするチチク姫。

 

魔島  高台 夕方。

城や町の廃墟。

記憶もよみがえり、この島に、30年ほど前まで、小さな王国があったと、当たり前のように語りあっている兵士達。、そして平和そうに話しているクリスや、ムハン国、モーゼ国の人々。

 

元通り、モノノケ王の赤い岩を封印するユリワカ達。

ムハン王「・・・ユリワカよ・・感謝の言葉もない・・・」

モーゼ王「一日も早くチチク姫と式を挙げ、両国の王となって国を平和に収めて欲しい。」

ユリワカに身を寄せるチチク姫。

 

しかし、ユリワカはモノノケ王の岩が、永久には封印できないことを知っている。人々に悪い心がある限りそれを少しづつ吸収して、いつか復活してしまうのだ。

 

眼下の浜辺で、両国の兵士達が楽しそうに、キャンプファイアーの準備をしている。

それを見つめるユリワカ。

ユリワカ「・・・ありがとうございます。・・・この平和が、一日でも永く続きますように・・・。」

 

終わり